こういうことです。 -
ごっきー
2015/01/16(Fri) 23:15:25
カウンセリングをスタートしてから一年あまりがたっ た。最近では少々荒れることはあってもリストカット(自 傷行為)をするまでにはいたらなくなっている。母親は当 時を振り返って「あのころは、いつリストカットをするか という恐怖におびやかされ、生きた心地がしない毎日でし た」と話している。「ほんとに信じられません。こんな安 堵の日がくるなんて。うそのようです」と。
「裕子さんのどこが変わってきましたか」という質問に 母親は、書き留めたメモを見ながら話し始めた。
1.「いやなことは、我慢してつづけなくてもええん や」と割り切れだした
大学で所属している郷土史研究会。入部したときは目あ たらしいことばかりで面白かったが、だんだんといやに なってきた。いままではそれでも「部長に悪いから」とか 「頼まれた調査を途中でほっぽりだすなんて、できない」 とかいって、我慢を重ねていた。それをすっぱりとやめて しまった。「いやなことは、いやなこと。がまんせんでも ええんや」と、割り切れるようになった。
2.「したくないことは、いや」とはっきり言えるよう になった
いままでは相手に気をつかって「いや」と言えなかっ た。友だちに「映画みにいかへん?」とさそわれて、 ちょっとしんどいなーと思っても「ああ、ええよ」とあわ せていた。帰ってきてからがたいへん。母親にあたりま くって「そんなにいやだったら、なんで行きたくないって いわへんかったん」と、母親も怒鳴りかえしたことがあっ た。最近はそんなことがなくなり「いややったから、いや やって言うたんや」と平気な顔をしている。
3.「気分の切り替えが早くなった」
気に入らないことがあると、一週間くらいうじうじして いた。「お父さんがああ言うた。お母さんがこうやった」 というふうに、聞くだけでうんざりしていた。それが 「あ、そうか、まあええわ。そんなこともあるやろな」 と、二時間くらいですぱっと切り替えられるようになっ た。
母親の読み上げるメモ用紙には、他にもいっぱいいろん なことが書いてあるようだ。「うーん、すごいなー。もの すごい変化ですね。自分のことがだいぶ見えてきました ね」とカウンセラーは、びっくりしたように言った。
「こんな安堵できる日がくるまで、二十年かかる と思っていました」
裕子が自分の言いたいことがしっかりと言えだし、やり たいことができだしてから、大荒れすることはなくなっ た。あれだけ心配したリストカット(自傷行為)も、今は まったくと言っていいほどしなくなっている。「お母さ ん、こんな所に包丁おきっぱなしにしたらあかんよ。あぶ ないやんか。ちゃんとしもとかんと」と、子どもから注意 されるくらいだと、母親は笑いながら話していた。
「先生、去年のいまごろですか、まだまだ手首切ったり してたいへんなときに、『あと一年しんぼうして下さい。 きっと変わってこられますよ』といわれましたね。私、正 直いって『えー、こんなたいへんなのに、一年で落ち着く なんて。二十年はかかるんちがうかな』と思ってたんで す。それがほんまに先生の言われるようになってきて。も うどんなに感謝していいかわかりません。ありがとうござ いました」と、母親は心からうれしそうに話した。
「いやいや、いままでのカウンセリングは足場がためみ たいなもんです。油断は禁物ですよ。これからのカウンセ リングで、子どもを伸ばしていきましょう。まだまだぐん ぐん伸びていかれます」と、カウンセラーはすこし引き締 めの言葉をかけておいた。